2009年12月号

クリスマスプレゼント


先日、イルミネーションがきらめくクリスマス商戦まっただ中の東京で、宮本亜門さんと茂木健一郎さんの対談を聞きました。お二人とも自分らしさを出しつつ日々を生きていて、なおかつ人間とはなんなのだろうということを追いかけつつ、自分の行くべき場所を探し求めている旅人のようでありました。そう、私には旅人に見えました。お互いに、「あなたはまるで子供のようだ。子供心を今も持っていると言われませんか。」と言葉を向けていて、ちゃんと自分のことがわかっているんじゃないの…と、私はにこにこ聞いておりました。
私はちょっと変わっているのか、お二人のようにまっすぐなものを心に持っている方々に、とても魅力を感じます。世の中的には器用に生きているとは言えないかもしれませんが、苦労をして自分の輝き方を見つけると、もうそこにかけるエネルギーは素晴らしいとしかいいようがありません。宮本亜門さんは、お芝居の演出を通して、その俳優、女優さんの中にある、より魅力的な能力が溢れ出てこないかと、常に心を向けているとのこと。そして、お芝居の稽古や、上演のさなかに思いがけない日常の生々しい想いや仕草が出てくると、とても心打たれると同時に、人間の奥深さに感動してしまうのだそうです。そして見るものは自分の心にも同じ部分があることを受け容れてもらったようで、勇気をいただくのかもしれません。
それを聞いていて、あれ、幼稚園で私がやっていることと似ているみたい、と気がつきました。子供達は自分と向き合い、自分とは異なる者(物)と向き合い生きています。嬉しいこと、悲しいこと、希望に失望、喜ぶ瞬間、怒りに満たされる時、そういう今を避けないで、ごまかさないで生活しています。一杯考え、悩み、停滞しながらも支えられてまた立ち上がる。私はそこに一緒に立ち会えるのですから、大変だけれどおもしろいのです。お芝居はそういう物事を凝縮したり、抽象化しているけれど、そこはやはり人間の生き様のたち現れる場なのですね。クリスマスを待つ期間(アドヴェント)を通して、私はどれだけの人間ドラマと立ち会って、感動を得たことでしょう。一人ひとりの輝き方に見とれられる、それは保育者への最高のクリスマスプレゼントなのだと思うのです。
園長  松本 晴子

体当たり!


園庭でお相撲をしました。力勝負をする時、大人が負けてあげた方がいいのか、勝つ方がいいのかいつも迷います。対戦相手は、主に年中さん。でも、この時は粘って負けたり勝ったりを繰り返してみました。驚いた事に意外と強いのです!こちらが粘っているので子ども達もどんどん本気になってきて体中の力を出し始めました。何度も対戦していると、「僕もやる」「僕もやる」と力を試してみたい男の子達がやってきて、段々子ども同士での対戦が始まりました。ルールは身体を掴んで押し出すこと。頭を押したり投げ倒す技はなしとしました。対戦相手は自分で決めます。
そのうち、ふいをついて押し出されたA君が泣き出しました。周りの子ども達はちょっと気まずそうな表情を浮かべたり、「今度は優しくやるよ」という子どもなりの気遣いを見せたり。私は「負けちゃって悔しかったんだね」と言ってA君の背中をなでながら行司役を続けました。相撲は進み、まだ涙が乾ききらないくらいの時に対戦相手としてA君が呼ばれました。A君は「やる」と言って出て行きました。そして、加減されることもなく勝ちました。B君が「泣いて強くなった」と言って喜んでくれました。そして「腰を持つんだよ」とアドバイスも。諦めなかったA君はちょっと誇らしげに見えました。
相撲はまだまだ続きます。力を入れた相撲に年長の男の子も加わってきました。驚く事に力は互角!勝ったり負けたりするのです。この勝敗の繰り返しが、ますます子どもの闘志を引き立たせ、対戦相手として選ばれる事にも誇らしさと自信を感じているようでした。今負けたばかりでも呼ばれれば堂々と出ていく。私はこの面白さと男の子達のすがすがしい姿にたくましさを覚えました。体当たりの遊びは、男の子達の心を強くし、友達の距離をぐっと近づけてくれるのです。
小林悠子

つくしっこクラブ
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