2002年8月号

またまた心、満たされて


 水戸に芸術館ができて、何年になったのでしょうか。建てられるときは反対もあり、物議をかもしたような記憶がありますが、私個人としては、水戸の宝物であると感じています。素晴らしいホールにはいい音楽が満ち、お芝居という不思議な空間が作られ、心をとばす発想があふれます。
 そんな芸術館からのお誘いで、9月のある日、パイプオルガンの音を味わう企画に参加してきました。小雨のどんよりとした日でしたが、5歳児がはりきって出かけました。しんとした空気の2階のオルガンからバッハのトッカータとフーガが流れると、元気いっぱいの水戸Kチャイルドが2階の柵から身を乗り出して、(おっと危ない!)、じっと耳を澄まして聞いているのです。でも、まだ子供たちは緊張しています。それをオルガニストの方が、マイクを使わない声で、ふんわりとほぐしていきます。「パイプの数っていくつだと思う?」「2!」??「100!」「2000!」
 「近い。近い。」「3,000!」「そう!!」というように。おまけに3人ずつ好きなように弾いていいという体験は、最高でした。本物の音が自分の指から出ていることに、男の子も女の子もにっこにこなんです。そして一緒に『散歩』や『あいすくりーむのうた』を歌った時には、なんともいえない一体感がありました。そう幸福なひと時。心地よい興奮が子供たちの心と、体に溢ていました。もちろん大人にもです。
 今は亡き佐川さん、ありがとうございます。

焦りは禁物!


 今年も、運動会に向けての活動が始まりました。かけっこ、玉入れ、ダンスなど張り切って参加してくる子もいれば、「……見てる」とうずくまってしまう子も毎年数人います。そんな一人、年少児のA君。A君は、9月の今だからこそ、そんなことあったよね、と思い出すのですが、入園当初、幼稚園に持って来るカバンも名札も帽子もエプロンも全部、「やだやだ」と拒否し続ける子でした。そんなA君、保育者の初めての事だからもしかしたら…の通り「今から園庭で玉入れやろう、A君がいないとあっちのクラスに負けちゃうよ」と声をかけても、「見ない、やらない、部屋に入る」の一点張り。何とか皆の見えるテラスにまで一緒に来てみるものの「見ない」とA君。しかし、クラス対抗の玉入れが始まると、表情がパッと変わりました。「頑張れ、頑張れ」と自分のクラスを応援し始めたA君。「いち、にぃ、さん、僕ね、数数えられるよ」と玉の数も皆の声と一緒に数え始めました。一回戦負けてしまうと、足をバタバタさせて悔しがるA君。これならばと玉入れの玉を拾って来て、「投げてみれば、A君が入れば勝てるかもしれないよ」と渡そうとすると「あっちやって、やらない」と逃げるA君。(焦りは禁物のようです。) 2回戦、A君のクラスが勝つと「やった、やった」と跳びはねて大喜びしていました。A君にとっては、実際に参加してはいなくても、皆の姿を見て応援しての参加でした。
 ある日、職員皆で話し合っている時の事、「今日は、嬉しくなっちゃいました。だってB君があんなに張り切って玉入れも体操もやるんだもん」とa保育者。「そうだったよね、年少の時は、身体中力が入らなくて、脱力していたし、年中の時も恥ずかしがっていたもんね」と思いを巡らせる保育者達。十人十色の心を持つからこそ、楽しい私達、そして幼稚園。焦らず(焦ってしまいがちですが…)A君が参加してくるのを心待ちにしている保育者達です。

つくしっこクラブ
友だち追加