2010年5月号

美しい世界


ipadが日本でも発売になりました。アップルの考えることはある意味単純で、人間の思考をパソコン類を利用してどういう世界を知り、繋げていくかということに集中できるように、作られているように思います。今目の前にいる幼子たちも、家庭で、授業でいながらにして未知の世界をのぞけるようになっていくことでしょう。先日「不思議の国のアリス」の電子絵本をWEBで見ましたが、動く絵ばかり追ってしまって、文字を読めませんでした(笑)。なんとも刺激の強い世界です。一方近代美術館で行われている『川端康成のコレクション展』に飾られている作品は、女性のふくよかな顔の土偶であったり、掛け軸の書であったりしましたが、川端康成が飽きもせず毎日毎日ながめたと記されておりました。美しいものを手に取り、作品世界の空気を感じ、そばにそれを置くことの幸せは、なんともいえない精神の支えであったのかなと思いました。心の中で個々人が経験していることは、基本的には他者には隠されたことです。けれども、この川端康成側の世界を幼い頃から少年期までは、たっぷり味わうことが、根っこを張るのには必要なのです。
大方今のIT世界の基を創りあげたメンバーは、ゲームばかりをして育った人でも、携帯依存でもない方達だったのではないでしょうか。自分の夢を現実のものごとにするためのツールとして、自分が主体になって考え動ける育ちをしてきている。そんな気がいたします。
そうそう、新入園のお子さんで、食事にあまり興味がない毎日だったのだけれど、幼稚園で食前のお祈りをすることを知って、家庭でも小さな指を組み合わせて、お食事前に食卓に集まるような日常になったとのエピソードを、伺いました。朝の食卓は家族が小さな幸せを感じるひとときだとのこと。ばらばらからつながりへ。そのことを知っていられれば、ipadの世界をも、使いこなせるようになるのかもしれないと思った、発売日でした。
園長  松本 晴子

お祈りしないの?


先日A君がこんなことを言いました。「先生、小学校はお祈りしないの?」私:「うーん…お祈りしない小学校もあるかもしれないね」A君:「なんでしないんだろう??」
私:「そうだね。なんでしないんだろうね?!A君はした方がいいと思うの?」A君:「うん。だって今日やったことがわかるから」私:「そっかぁ。そうだよね。小学校でもするといいかもしれないね!」
A君の素朴な疑問に私ははっとしました。A君のクラスの先生はきっと、「今日はお砂場で山を作ったお友達がいた」とか「ブランコが楽しかった」とか「〇〇君が鉄棒ができるようになって嬉しい」とか、いろんなお話をお祈りの中でするのでしょう。A君は毎日、先生のお祈りを聞くことで、周りの友達の様子を知り、それをいいものだと感じているのでしょう。子ども達とお祈りをする時、私たちは自分の感情を素直に伝えたり、知ってもらいたいことや子ども達へ密やかなメッセージを織り交ぜることがあります。A君は今「お祈りした方がいい」と感じています。子供達はお祈りというものをどのように捉えているのか・・・A君のように段々と「いいものだ」と感じていってもらえる事は嬉しいものです。いつからそんな風に感じていたのか、日々子ども達の心の中は育っていっていることを深く感じました。A君の心の中はぽかぽか暖かそうです。
小林悠子

つくしっこクラブ
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