5歳児の年長組が卒園していってしまいました。卒園式ではとても感動したりも致しました。はじめてのお式の練習を、水戸幼稚園は2回しかしません。そのぶん、ほかの時間は遊ぶのです。たった2回であるのに、当日の意気込みは一人ひとりにみなぎって、目と目をあわせて証書を渡すことができる、私の特別な時間(とき)でもあります。
次の日はその下の在園生の方々だけが、登園してきます。望組がいないことに特段のざわめきはなく、いるメンバーだけで、日常がすすんでいくのでした。出席簿をもっていくお仕事や、お弁当を配ること、お祈り。砂場の道具を洗ってしまう姿も、4歳児の方々があたりまえのようにやっていきました。当園では年上の方がことさらに年下の方のお世話をしましょうとは、意識付けしません。それぞれが心動いてやってみて、また感じて、考えての出会いでいいと思っているからです。ただ、他者をよく見ているそのことから、自分をミラーリングする力がついていくといいな~と願っているところがあります。
5歳児のいないこの日、一人の4歳児の男の子が、私のところに駈けてきました。「せんせ、むし、むし、むし、むし、むし!」彼の手のひらには小さな幼虫がうごめいていました。目を輝かせて、それぞれの保育者に「むし!」を言い続ける姿は、ヘレンケラーが「WATER!」と叫ぶ、井戸水を手に当てた時の姿と重なって思い起こされたのです。彼はずっと虫が怖かったようでした。お兄さんお姉さんが頭をくっつけて虫をのぞきあっている姿をずっと見てきて、心は動き出していたのでしょう。そしてある日、自分で手のひらにのせることができてしまった。サリバン先生は彼にとっては望組の面々だったのかな。。。とうれしく思ったのでした。
どんなあなたも、宇宙にひとりしかいない唯一の存在。どんなあなたも、すてきなことをしているんです。
ただ気づいていないだけ。気づかれていないだけ。そうではないですか?
園長 松本晴子