園のブランコのある一角に一本の梅の木があります。蕾が開きだしたある日、ブランコのところへ来ていた子どもに声をかけ、持ち上げて香りをかがせてあげました。その方はマスクを下ろして吸い込んで、「バナナの匂いだ!!」と小さく叫びました。「え、ぼくも!」とそばにいた方も興味を持って、匂いをかぐと「バナナだ!」と叫ぶのです。ですから、私も興味津々で匂いをあたってみますと、本当にバナナの匂いがするではありませんか。今まで何度も白梅でも、紅梅でも香りを味わってきましたが、バナナを思い浮かべたことはありませんでした。その日の特別感は最高で、こんな不思議と出逢わせてくれた子どもとのやりとりを幸せに思いました。
後で調べてみますと、バナナの匂い成分の素と同じものが梅には含まれているとのこと。こんなひょんなことから、世界中にはご自分の興味を持ったことをコツコツと調べ研究する方々が出てくるのかもしれません。私には知らないことがいっぱいいっぱいあって、まだまだ驚くことができるんですね〜
この3月5歳児が卒園して行きました。名残りを惜しむお母さんたちを尻目に、今を生きている子どもたちは、もう次の世界を見ているようでした。色んなことを思い巡らすことに、無駄と思える時間の流れの中に、発想の芽やセレンディピティがきっとある、そう思います。閉じているようなコロナの世界も、今まで当たり前と思って考えもしなかった貴重な発見を与えてくれたという式辞を述べてくださったお母さまの声が、心に響きます。
松本晴子