2012年9月号

時事ニュースから学ぶこと


境界線を作ることが好きなのは、誰なのかな。。。とニュースを見ると思うことがあります。いらいらしながら相手国に対して不機嫌な様子を見せていく一部の大人を、不思議な感覚で眺めてしまう自分がいることに気づきます。
園のお子さんも入園してしばらくたつと、園の物を「さわっちゃだめ!」と自分の周りに囲っておく姿が出てくるものです。自分の周りに気に入ったものがある程度たっぷりあるということの、安心感。わかります。希少価値になると手放しにくいので、量を増やすようにも努めます。ただ私どもでまず示したいのは、「今、○○さんが使いたいから使っているの。」ということです。すぐに『一緒に使わないとね。』とか『貸してあげましょう。』とは言わないよう努めます。それを繰り返すことの間に、チャンスが巡ってくることがあることを、体得してもらいたいのです。使えるときは必ずあるように見受けられます。
でも私たち大人は、道理や理屈で正義と思われることを教えなければと、思いがちのように思います。その理屈を耳にしてしまえば、言葉がたつお子さんならば別の理屈を並べ出します。言葉が巧みでなくて、これでは相手に負けてしまうと感じれば、力ずくで反撃を始めます。大声をあげたり、泣きわめいたり、蹴飛ばしたり、たたいたり、かみついたり。。。
一方、使い続ける○○くんの状況を、「今線路をつなげて、長くしているね。水戸まで行けるようにしたいのかな?」など想像しながら言葉に置き換えると、○○くんの行動の訳に思いが至るきっかけになり得るのです。なんかここに相手とやっていく大事なヒントが隠れているような気がします。
国境をどこにするかで、自分たちのまわりに置けるもの(資源があるかもしれない期待を込めて)が増えるかもしれないという思いは、3歳児でも持つ感情に似ています。テリトリーに入ってくれば、「だめだよ。」とすぐ言うのも、幼い者の姿であり、そこに正論を示そうとする大人(識者)が現れやすい。なんか今近隣でもめていることのきっかけは、幼い者の世界にあることと同じように見えます。私たちはどうやれば相手の行動に思い至れるように訓練されるのでしょう。棋士の羽生善治さんは対局時に自分の打つ番では自分の指し手、相手の番では相手の身に瞬時に脳が切り変わって、相手の打ち手に思いが至るそうです。すごい方だと思います。幼児期に学ぶべき課題を考えさせられる昨今です。
園長  松本 晴子

鏡 よ 鏡


誰かと話していて、相手が鼻の下を擦ると、ついつい同じ所が気になって、同じ仕草をしてしまうといったような経験が、誰にでもあるのではないかと思います。この「ミラーリング」(=行動のオウム返し?)は、好意を抱く相手に対しては、より強く出てしまう傾向が認められるといいます。
私も子ども達に好意を伝えたい時、意識的に「ミラーリング」をします。やまびこのように写し取った仕草などを返し続けていると、不思議と子ども達は安心し、心を開いて微笑んでくれるようになるからです。実は、子ども達も「ミラーリング」をある意味駆使(?!)して、互いの思いを感じ合ったり、共感を表現し合って成長しています。今回はそんなエピソードをお知らせしたいと思います。

3歳児のA君はB君(3歳児)が好きです。いつも一緒にいたいので、同じ事をします。変な顔をし合ってはゲラゲラ笑ったり、訳もなく愉快になって大声を上げてみたり、何となく廊下をダッタダッタダッタと走ります。そして、互いの目と目が合うだけで、ニッコニコ…。同じ事をしていると一体感のようなものを感じ、2人だけの世界の中での独特な満足感もあるようでした。片付けの知らせがあっても「まだ遊んでいたい!!」と強気です。食後の片付けもせず、遊び出してしまう勢い!! 1人だと勇気が出ないことも2人だと気持ちが大きくなって、できてしまう(=やってしまう!?)何ともいえない開放感を味わっていたようでした。

そんなA君が何の前ぶれもなく、B君と行動を共にした日――― 片付けの知らせがあると、スーッと入室。また、「ごちそうさま」の前に片づけを済ませ、なぜかC君の後を追うようにしてトイレへ。――― A君は昨日と同じA君です。A君が変わった訳ではなく、A君が「ミラーリング」する相手を変えただけなのです。でも、こんなことって本当にあるんですね。その行動の変わりようには驚かされました。
その2日後、3人は一緒に遊んでいました。もちろん、いつものように片付けの知らせがありました。さて、A君はどうしたでしょうか? ご想像にお任せいたします。
(A君がB君とC君の結びの神!?… 実におもしろい展開となりました。!!)

フリー担当  深谷幸代

つくしっこクラブ
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