2014年9月号

気分よくなる魔法


2学期になってからも、保育時間は子どもたちの中にいることが多い本年です。子どもたちの中にいることは苦にはなりませんが、他の事務仕事がなかなかはかどりません(笑)。頭の回転がスムーズでないことが、身にしみます。
そんな中、9月になってこぼれるような笑顔を見せるようになったYちゃんとは、ここのところ女性の偉人の名前で私と盛り上がっています。家に伝記があるそうで、そこに出てくる名前当てです。『ヘレン・ケラー』『ナイチンゲール』『キュリー夫人』までは、あっという間に言えました。そこから『マリー・アントワネット』『モンゴメリ』『ジャンヌ・ダルク』『クララ・シューマン』と頭をひねり記憶をたぐり寄せていきます。「それあるある!」と言われる度に、私は有頂天になり彼女と手を取り合うのでした。(なぜか日本の女性『清少納言』とか『淀君』とかでは??という反応。)彼女とは相棒のような気分です。本が好きというところが安心を呼ぶのかもしれません。
Tちゃんとは叔母と姪っ子といった感じでしょうか。入園一年目でまだまだ不安になる時が、ちょくちょくあります。一緒にいたいという気持ちを受け入れ、職員室で出欠を調べるときにも私に案内され、机のそばに控えています。そして登場!プラステン。棒に穴の空いた円形のプラステンを差し込んで積み上げて、毎回Tちゃんはジュースをご馳走してくれるのです。「これはバナナ」「これは苺」「そしてこれは私の青梨」・・・「あおなしね~」(きっとあおりんごから導かれた果物だわ!)とつぶやきながら、ほのぼの顔を見合わせて笑い合うのです。最近は冗談のような強がりなようなことも言ってくれるようになりました。
こんなことはわずか5分くらいの間のことです。が、そのような状況になれば、毎回繰り返し、安心をお互いに得ていける魔法の呪文の役割を果たしているのかもしれません。
園長  松本 晴子

9月の幼稚園


★ラップの芯★
“ラップの芯をどちらがもらうか”で年中A君とB君が言い合いをしています。「ジャンケンで勝ったから僕がもらう」「あれは負けた方が勝ちのジャンケンなんだ」「でもそんなことさっきは言っていなかったから僕は知らなかった。だけど、明日は持ってくるよ(明日B君にあげるよ)」「でも忘れちゃったら?」「忘れないよ!」「でも忘れちゃうよ、きっと」・・・・・
相手を信じて待つというのはなかなか大変なこと。お互いの主張は平行線です。
私は一緒に遊んでいた仲間たちにも相談しました。「こんな時どうすればいいかなぁ・・・」
「ジャンケンで勝った人がもらうんだよ」「でも、それでは二人とも納得できないみたい」「じゃあ、芯を半分に切ったら?」「長いのがいいんだよ」「もう一本探したら?」「うーん・・・」「もし、A君が家に持って帰って忘れちゃったら、次の日にすればいいんじゃない?」「それでまた忘れたらまた次にすればいいよ」等々、友達は思いついた事を提案してくれました。それでもなかなか折れない二人。
少しするとC君が「いいことがある!少しずつ(短い時間ずつ)持てばいいんじゃない?」
するとB君「それじゃ、○○の時間になったら返してね」「わかったよ」とA君。一件落着です。
芯は時間までA君の手に。A君もB君も途端に笑顔復活です。C君にもお礼を言うと「僕がいいことを思いついて良かったよ」と満足気です。自分の為に一生懸命。相手の為に一生懸命。どちらも大切な事。そして折り合いがついたら元の関係に戻っていける。何だか清々しくて羨ましくなりました。
大切な芯は約束通り、時間になるとB君の手に渡りました。


★いろんな箒★
竹ぼうきで落ち葉掃きをしているのをじーっと見ていたD君。「(履くところ)木みたい。履いても折れないんだね。バスの中を掃除するほうきと違うね」「そうだね。竹の細い物を針金で巻いてとめてあるね。竹は折れにくいんだね」
何でもない日常の会話。でもD君にはいろんな発見があったことでしょう。いつかどこかでこの知識が何かと結びつくのでしょうか。子ども達の世界はこういう事が沢山あるのです。


★頑張れ!テントウムシ★
「先生!来て来て!」E君とFちゃんに呼ばれて行ってみるとテントウムシが水路で流されているので、急いで救出しました。
助けられたテントウムシは砂地を歩きにくそうに歩いて、歩いては転んで・・・ひっくり返ると足をバタバタさせ、背中の丸みを旨く使って起き上がり・・・二人はまた水路に落ちないか心配して後を追います。時々水路に近づいてしまうと手でガードを作ります。そうしながら、テントウムシが砂地を歩くこと、特に盛り上がった砂は歩くのが大変だと知りました。その時の二人の心は必死に自然に戻ろうとするテントウムシ虫と同じなのだろうと思いました。

小林 悠子

つくしっこクラブ
友だち追加