ある郵便物から
昨年の11月のこと。幼稚園のポストに見慣れぬ郵便物が入っていました。どうやらアメリカから送られて来たようです。丁度炭素菌の騒ぎが起きている頃で、開けてみるのも怖いような気分ながら、幼稚園での唯一の男性が開封してくれました。出て来たものは怖いものではなく、アメリカのミッションスクールの小中学生が描いた絵でした。先生からのお手紙が添えられ、テロが起こった後、平和とは何?世界が平和になるためにはどんな方法があるの?ということを子供達と考えているとのこと。ぜひそちらからも絵を送ってほしいとのことでした。
子供達の絵はユニセフの絵のように、色々な民族の子供達が手をつなぎあったり、美しい地球が描かれたりするものでした。各お部屋に絵を貼り出してもらい、保育者に話をしてもらいました。
「dちゃんはどの絵が好き?」と絵を前にして論議している姿。「あたしも返事かくんだ!」とわくわくしている姿。そんなことで、描きたいという子供達が、自分の大好きな友達や、両親をクレヨンで描いたり、まねをして地球や国旗を描いたり、またクリスマスの季節でしたので、カードを作る子供もいました。それらは保育者のメッセージと共にアメリカへ送られました。
絵には次の様なメッセージを添えました。
当園の子供達はまだ戦争というものや、テロを身近に感じたことのない存在です。平和という実感もあまりないまま、平和のうちに暮らしています。アメリカの中で起こっている様々な苦難もピンときていません。でも、世界がつながっているということを、皆さんの絵から少し感じることができたようです。
そして1月の半ば、あのミッションスクールの先生からお手紙がとどきました。1月の終りに学校で開催している絵画展で、私達の絵を飾るとありました!うれしい!!。そして、遠く日本から皆さんの特別なメッセージをもらって、とてもすごいことだと思ったとありました。
アメリカの攻撃を受けて亡くなっているアフガニスタンの子供達がたくさんいる今、私達は武力と言うものに戸惑いを憶えずにはいられません。平和を創るとはどういうことなのか、今も私の心の中に重くのしかかっています。そう、世界はつながっているのです。ある者たちだけがいい目を見るのは、平和ではないのだと、つぶやいてしまいます。違っていることを当たり前のここととして受け入れる訓練を、私達はどこで受けていくのでしょう。ね…。
今年も水戸幼稚園は元気です!
2002年も元気に始まりました。ちょっと風邪気味な子も多いけれど、治ったら子供は風の子とばかり、園庭中を走り回っています。そんな風もなく穏やかな冬晴れの日のこと。「わーん」とものすごい泣き声。「先生、Aちゃんが泣いているよ」「MちゃんがAちゃんの頭に砂をかけた」と年中組の女の子数名が走ってきました。「どうしたの?」と聞く前にその原因は分かっていました。だってこの30分も前からこの3才児の二人は“4つ車の付いた、通称『はこぐるま』”を巡ってけんかをしていたのです。保育者が間に入ったり、交換がスムーズに出来るように駅を作ったり、はこぐるまを引っ張ってあげていた年中組の子がなだめたりしたのですが、Mちゃんの方が沢山乗っていて、思うように自分に順番が回ってこなかったAちゃんが、はこぐるまに座り込む実力行使に出たのです。声を張り上げるMちゃん。「私だって許さないから」と泣きじゃくるAちゃん。「これは、水戸幼稚園のなんだから、仲良く使わなくちゃいけないんだよ」と声を掛けたら、「これは、Mの!」といきなり頬を叩かれびっくりした保育者。周りもしーん。痛かったけれど、私も反省!どんな時だって、言い分があるんだから、それを聞かなくちゃいけなかったんですよね。2人の思いを聞いた後、どちらが先に乗るかじゃんけんをすると、Aちゃんの勝ち!Mちゃんはうらやましくてまた大泣きでしたが、ここは心を鬼にして4才児の子供達とAちゃんを乗せたはこぐるまを引っ張り園庭を一周。Mちゃんの所に戻り「Mちゃんの番だよ」と友達が声をかけても「Aちゃんなんて嫌い!嫌い嫌い」と首を振るばかり。嫌いと言われて「お母さんに言うから~」と泣くAちゃん。でもMちゃんはまだ泣いていて保育者もおてあげです。2人をつれてテラスに座り、しばらく気持ちが落ち着くまで泣いていてもらいました。トントンと背中を叩き、「Mちゃんは、Aちゃんが乗っている間、泣いていたけれど我慢できてえらかったね」「Aちゃんは、自分の番が終わったら交換しようとしていたからえらかったね」しばらくしてMちゃんは、はこぐるまに乗り込み園庭を一周!終わるとAちゃんに交換することが出来ました。2~3回も交換するとお弁当の時間。2人はさっきのけんかはどこえやらのニコニコ顔!。そこに4才児のKちゃんがボソっと「先生、AちゃんもMちゃんもずるいよね」と。そう、今日の午前中ずっと年中組の友達数名は、この2人のはこぐるまを引っ張り、押してくれていたのでした。そこで片付けの場所までは、年中組の子供達を乗せ、よいしょよいしょと引っ張ってあげていました!さすが4才児は交換もスムーズ!ずっと付きあってくれてありがとうね!Mちゃんはというと、お弁当後、目があうと「先生!さっきはごめんね」と跳び付いてきました。Mちゃんをギューって抱きしめながら、(そう、ほっぺたはとっても痛かったのよ、だってあの時、次の言葉を出すため10ぐらい数を数えたもの…と心の中でつぶやきました)なにはともあれ、2002年の幕開けにふさわしい?けんかでした。