2013年
選挙があって、また日本の方向が修正されようとしています。今の大人が元気になることは必要です。でも政治の世界が経済優先の土壌を前面に出すことは、幼子が未来を生きていくのに必要な根っこのための土壌ではないように思います。市場原理に意識が向くときの私のある日の動きは、え、こんなに円が上がったの!それならこうしておけばよかった…という自分の損得や利害に夢中になる姿なのです(笑)。今はまだ日本はいい時代です。大変と言っても、格差はまだ補える範囲です。その間に、未来のいろいろな状況を工夫して味わい、それぞれの存在の生き方の多様性を認めて、多様なロープを使い分けていくような感覚で、社会の土台をしっかりさせていく。そんな時間として、今を使えないものでしょうか。今までのように、効率よい路線に乗れるか、乗り遅れるかが空気として漂よってしまったら、社会の宝物である子どもたちのことを本気で心配している心ある方たちも、頑張りきれなくなるかもしれない…そんな思いの中に、私はいます。
水戸幼稚園は、今年も難民を助ける会への募金を集めました。地雷除去の目的でお話を子どもたちに語ってきました。でもピンとくるというのは難しいです。爆弾が地面に埋まっていて、踏んでしまうと爆発する。
爆弾を落としたのは大人たちで、戦争をしているときは爆弾が落とされるみたいだということは5歳児には伝わっていきました。「なんで大人はそんなことをするんだろう。」「死んじゃうじゃないか。」これが今の5歳児の素直な気持ちです。子どもたちはどこどこの国の大人はとは見ていません。大人という存在は、そんなことをしてしまうと見ているのです。同じように、普段から市場原理を優先した言動を見せてくれば、大人はそういうことがまず大事と学び、いつのまにかその大人を利用していた方が楽かなとか、得かな~なんてしたたかに生き出すかもしれません。一方、そんな社会が汚く見えたり、乗り込みたくない子どもは、この日本に魅力なく、自分の居場所を見いだせず、引きこもったり、消えてしまったりしやすいかもしれません。海外に消えるのは大いに結構ですが…。自分で居心地のよい居場所をなにかしら見つけられる、寛容な社会を目指したく、新年もあがいて参ります。
同様に水戸幼稚園は、2013年も、変わらず泥くさくちょっと昔の子どものように、遊んでまいります。
遊びを考えていく子どもの後押しをしていきます。職員一同、精一杯の想いを持って!
園長 松本 晴子
スイッチONにするきっかけ
寒さが身に凍みる季節となりましたが、逆上がりの練習に励む子ども達にとって、鉄棒の冷たさは何の問題にもなりません。「逆上がり」は子ども達の心を捉え続けています。星組のある子は、仲良くなった光組のお姉さんに「逆上がりできるようになるよ! 私だってできるようになったんだから」と言われて、俄然やる気が湧いてきたりしています。
本当に不思議ですが、やる気ってちょっとしたことで、湧き上がってくるものなのですね。クリスマスを迎える準備の中でもいろいろなドラマがありましたが、やる気になるスイッチを「ON」にするのは、やはり誰かの言葉のようです。
◆A君はどちらかというと、遠慮がちな話し方をします。でも、クリスマス会当日は驚くほど大きくはっきりとした声で、台詞を言い自信溢れる歌いっぷりだったそうです。何が彼にあったのでしょうか。私たち保育者は「?」の渦に…。次の日、A君に聞いてみました。「昨日、A君とっても大きい声で台詞を言えたんだって? 先生達みんなびっくりしてたよ。どうして大きな声が出たのかなあ。何か良いもの食べたの?」「ううん。……あのね、お父さんが『もっと大きい声出る』って(言った)…。」「そうなんだ。お父さんの言葉を信じて、試してみたら大きい声が出たんだ。」「うん!!」
「大きな声を出してみよう」と心に決め舞台に上がっていたんです。出番を待っている間もお父さんの言葉を心で繰り返していたのでしょう。(心強い応援!!)
◆B君は聖劇で宿屋をやりたいと思っていました。役決めの話し合いのために、第三希望まで考えておくように言われて、「僕は第一希望も第二希望も第三希望も宿屋!!」と言っていたそうです。自分のやりたいことをそんなふうに表現できたB君の成長が嬉しくて、次の朝、私はB君に話しかけました。「そんなにやりたい役があるって、幸せだね。」「うん。」などいろいろ話した後、保育者:「でも、ヨセフをやりたい人いないんだって。」B:「そうなんだ…。」保育者:「あっ、お片付けしなくちゃ。じゃ、またね。」何気ない会話はそこで終了。
降園後、「B君が、ヨセフをしてくれることになりました!!」と聞いて、びっくり。あんなにやりたかった宿屋をやめてヨセフを希望するなんて、B君の中で何が起きたのでしょう。(私の影響かな…)
満3歳児担当 深谷幸代