こどもはこどもを生きている
毎年大寒の頃一周する千波湖畔。今年は小春日和のような陽差しの中を、望組(5歳児)、光組(4歳児)で出かけてきました。水戸市内は遊びに連れて行ける公園が少ないという声を、よく保護者の方から聞きます。それは公園が一カ所に集約されているからといえましょうか。世界でも有数の広さ、セントラルパークの次と言われる偕楽園公園がそれにあたります。ですから子どもたちにとっては休日にパパや家族に連れてきてもらう場として、身近な存在かもしれないのですが、あらためてクラスの仲間と保育者とで出かける浮き浮きした心持ちは、いいものでした。
湖には群れをなして暮らしている生き物がいますが、白鳥でもカモでも家族のように擬人化して、「今お母さんに追いかけられているんじゃない?」とか、「私たちに着いてくる!一緒にお散歩する気かな…」とか、「一本足で立っている!寒そう。」と行動を観察して意味をわかろうとする姿にあふれていました。それをそばにいる友や、保育者とあ~だこ~だとおしゃべりするのが、またおもしろい。水の色や光り方、水面に出来る水鳥の軌跡、氷の模様や霜のかたまり。道ばたの白鳥たちのお尻から出る落とし物に気をつけていたのに、ちょっとおしゃべりに夢中になってうっかり踏んでしまったRくんの体験。排水溝の音と流れていく先の暗闇に、いったいどこへ行くのだろうというほのかな不気味さ。えさを毎日あげに来る方には慣れているのに、僕が手を伸ばして差し出したら固まってしまった黒鳥。心は活発に動いています。そうそう、おやつにドロップを受け取ったけれど、嫌いな味の色のようで気が重くなってしまったKちゃん。それに気がついて誰かに取り替えてと言ってみたらと提案してくれるNちゃん。言えないな~言えないと悩みながら歩いていたけれど、「Kちゃんどうしたの?」と声をかけてくれたHちゃんの笑顔に悩みを打ち明けると、あっけなく「私、それ食べてみたかったの!!」と交換成立。「あたし言えたんだ~。」と自信になった出来事。
園外に出ると「こどもはこどもを生きている」とつくづく感じます。今のままのあなたでいいと、心から思ってしまいます。愛おしい光りの中で風を感じながらの3キロでした。
保育者で写真家の小西貴士さんの写真集『子どもは子どもを生きています』(フレーベル館)お薦めです。
園長 松本 晴子
備えは万全?!
3学期、卒園や進級に向けて、保育者は最後の働きかけ(=準備・調整)を試みます。「これで大丈夫」ということがない未来に備え、もし今できることがあれば今しておこうと思うわけです。もちろん、子どもに対しては「あなたはあなたらしくあなた自身になる」のが大前提で、保育者はそれを支えるというスタンスです。でも、「この期に及んで…」と言われてしまうかもしれませんが、この時期保育者は、一人ひとりの課題や乗り越えさせたいこと、また、伝え残していることはないかなどと、様々に思い巡らすものなのです。最後は、人知を超えた神様の守りと導きに委ねる他ないのは分かっていても、滑稽なまでにちょこちょこ働きかける毎日です。(笑ってください。)
★回らぬコマも魔法で回る?!
「コマに魔法をかけておいたよ!!」と、登園早々保育者に声を掛けられて、「エ~ッ!」とA 君。外へ出て行ってしまいました。「先生、魔法だなんて、何考えてるの!」と思われても、諦めず声をかけ続けると、やっと食後、「仕方ないなあ、じゃァ、やるか…。」といった感じ腰を上げてくれました。「回らないからやりたくない」というのがA 君の本音です。でも、付き合うしかないか…。5歳児ですからもう魔法なんて信じてないのが普通です。そうです。その通り!! でも、黙ってアドバイスを受けて紐を巻き、コマを投げてみると…。回るではありませんか。A 君は目を丸くして、「あれっ、回った。」と一言。「ねっ、だから魔法をかけておいたって言ったでしょう。」「…そうだね…。」 (君の人生にもこっそり魔法をかけておこうかな。)
★保育者踊れば子どもも躍る?!
「Bちゃんの声、はっきりとしたいい声になったね。小学校に行っても、その声で、困った時は、『助けて』とか『手伝って』って言えるね。」「うん!!」「すばらしい!!」云々。いろいろと伝えたい思いはありますが、バレリーナになって踊るまね(回転)をして笑わせたり、星組の時抱っこさせてもらえなかったことなど昔(!?)のことを話してちょっと困らせつつ、その成長を確かめ合いました。さて、その日の夕方、年長担当の保育者からこんな活動での様子についての報告がありました。「粘土で作った器に紙で食べ物を作って入れたら、Bちゃんがなぜか凄い勢いで食べまくっていたんですよ。はじめてですあんな姿…。テンション高かったです。何があったんでしょうか。」(…? …!! 私、心当たりあります。)
虹組担任 深谷幸代