共に視る関係

幼稚園の南側、沢渡川の緑地は県が管轄する憩いの場です。昔は田んぼが広がっていたり、梨畑があったそうです。のどかな風景がイメージされます。園の近所、緑町には納豆屋さんもあったそうで、納豆売りが毎日歩いていたとのこと。水戸幼稚園と隣に立つ老人福祉施設の愛友園の間の奥には、宣教師館が立っていました。戦前に来日したアメリカのクウェーカー教徒(キリスト教の一派)であったニコルソン氏のことは、ご高齢で昔から水戸で暮らすみとっぽのキリスト教関係者なら、ご存じのことと思います。ニコルソン氏は、水戸ののどかな風景を愛されたそうです。水戸幼稚園もニコルソン氏の勧めで、事業が始まったといいます。このあたりの土地にどんな物語が紡がれてきたのかは知る由もないのですが、物語は常に生み出されていくのは確かなことです。

現代の物語。緑地へお散歩に行った光組。途中途中で何かを発見したり、発見したくて動き回る姿が、あちこちにありました。木陰の下で保育者とバスごっこをしているメンバーに目が留まりました。老眼ですから表情は見えない距離なのですが、カメラをズームにしてのぞくと、なんともいい表情なのです。江戸時代ごろの子ども感とでもいいましょうか。人間の関係性には、相手と向き合って見つめあってというものがあります。一方横に並んで「あ、電車だね!」と指をさす子どもと、「そうだね~」と頷く関係のあり方です。日本の文化の中では前者よりも、後者の同じものを一緒に見つめる関係が大切にされてきたとのこと。『共視』という言葉で示されますが、そんな空気間の漂った場であったと、感じました。心が寄り添う関係性は、こうやって育まれるのでしょうし、緑地がそれに一役買ってくれてもいるのです。

園長 松本晴子

つくしっこクラブ
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