2010年2月号

何を大切にする?


3月を迎えると、この1年間の幼稚園としての歩みを振り返り、評価していくことを行っていきます。水戸市の幼稚園の中では際だって、わんぱくで子供らしい発想をきらめかせる子供達が、桜の大枝の腕の中で、はたまた青空の下で、ゆるやかな時を過ごしていきます。先日は、冬なのに凍った地面に甲虫の幼虫が!帰るのに外へ並んでいた子供達は、さっと列を崩して何?何?っと頭を寄せ、「先生大変だー!」と一目散に呼びにきてくれました。「もう死んじゃってるかな?寒いけど大丈夫かな?」という真剣な言葉に、子供達の生き物に向ける温かなまなざしを感じました。私はそーっと落ち葉の布団の下に置いてきました。
ある保育雑誌にお茶の水大学附属幼稚園の事が特集されていました。写真も載っていて、あらびっくり!ラフな私服に手作りっぽいエプロンを男女とも着用。板張りの廊下にはままごと道具や衣装が散らばり、土の園庭では段ボールの箱に入って男の子達が電車の運転手になっているのでしょうか?友と走りまわっています。なつみかんを採ろうと木に登ろうとする男の子達が出てきて、登れないとなると、掃除用のほうきを持ってきて、たたき落とそうと懸命になっています。とうとう根をあげて、「先生採れないよ…」となると、「それなら踏み台を出そうか。」とやっとアドバイスが出てくるという流れ。保育者はじっくり子供の生活を観察して、すぐに方法を教えたりはしないのです。「私たちは、今その時の子どもの関心や喜びを大切にしています。ひとりの子の関心がゆっくりみんなの中に伝わり…」という副園長先生の言葉に、当園と同じ想いを感じました。ちょっと嬉しいページでした。やっていく方向は正しいのだと。そのために毎日保育者は、子供の歩みの振り返りをかかしません。
「あー…」とうめくような想いは毎日あります。が、後伸びするであろう子供達への確信を私達は持っているのです。大地に足をつけ、神様に見守られていることを味わいつつ、新しいステップへと送り出していきましょう。
園長  松本 晴子

自分で認める時・・・


先日A君と段ボールを切ることになりました。段ボールカッターを見せるとA君もやってみたいと言うので、切ってみることに!のこぎりと同じで刃を引く時に力を入れます。A君は何度も手を動かして少しずつ切っていきました。そこに「僕もやりたい!」B君。二人は並んで切っています。今度は年少さんがやってきて見学が始まりました。しばらく見ると「B君の方が早い!!」「すごいね。B君て」「A君は遅いね」と見たままを話し出しました。子ども達は時には悪気無く大人がはっとする言葉を口にするものです。
褒められたB君は得意そうに切り進め、A君は「いいんだよ!慎重にやってるんだよ!」と何度か言い返しました。確かにB君はコツを知っている様で勢い良く切っています。「だっていつも竹を切っているもん」とB君。刃物の扱いには慣れているようでした。見学者がいなくなっても二人はしばらく切り続け、そのときA君がぽつりと言ったのです・・・「やっぱりB君は早いな・・・」
さっきは一生懸命自分のやり方をアピールしていましたが、心の中でやっぱり気になっていたのでしょう。でも、こうやってどこかでいつか相手を認められるという事はとても素晴らしい事だと思いませんか?
A君はB君がやめた後も切り続け、結局その日の午前中の遊びの時間を費やしました。寒い日のテラスでの作業です。途中で上着をはおり、また続けるA君。見るとその技術はアップして次々と切れるようになっていました。身体の向き、手の置き方、やりながら感覚で覚えたのでしょう。その熱中ぶりに感激してしまいました。
切った後の段ボールは紙袋一杯。数日たちましたがそれをA君は使おうとしません。初めは目的があって切り出したものですが、A君にとって途中で切る事が目的となったのです。だから切った後のものには特に思い入れはないようです。子ども達にそんな姿はよく見られます。でも、何かの時に使えるようにしばらくとっておこうと思います。沢山の段ボールを見てA君はどう感じるのでしょうか・・・
小林悠子

つくしっこクラブ
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