変化の中で
この1年の年度で目に見えて日本が変わったところがいくつかあります。その一つに原子力発電所が一カ所しか稼働していないということがあります。電力というエネルギーを作り出す方法は火力をはじめ他にシフトを移し、新しい方法を模索する試みが起こり始めています。これはすごい変化です。では原子力関係で働く方たちの働きかたは変わるのでしょうか？仕事はあるのでしょうか？震災の被災地でもそうですが、仕事量が減って給与が減額されたり、リストラにあった方の家庭は、母親も仕事を探し生きていく糧を得ようと動き出します。幼い子どもは保育施設や学童保育へ向かい、はたまた家でお留守番がてらゲームをして過ごすかもしれません。電力の不足は国内産の身近な生活するための全てのものの金額を、つり上げていくでしょう。そのことを私は享受しようと思います。外国産のものもいいなと選択すれば、購入し利用していきます。家庭にあるものに一手間かければ、時間と労力をかければ、質素に、でも健全に生活を楽しむことができることも、知っています。LOHAS的に生活するならば、夫婦で働きながらワークシェアリングが必要です。時間を経済優先の仕事に切り売りするわけにはいかないのです。さて人間は給与が減っていくことを受け入れ、消費税が上がって福祉がどうにか回るような制度改革に着手し、産み育てることと、年老いても健康に生きることを希望と出来るような方向にし、企業の成り立つ意味合いを再構築し、商品を多く売ることからの脱却を図ることができるでしょうか。購入者であり生活者でもある私たちは物品を数多く持つことから離れていくことが、きっとしばらく続くでしょう。もちろん子どもの数も、結婚して家族を持つことも、しばらくは減る方向だと思います。長い寒い道のりを、氷河期を、マフラーで首を温め、ヒートテックを身につけて、害のない食べ物を探しつつ歩かなければならない世代があることを受け入れなければなりません。
ただ、今は世界の出来事はすぐ知ることができ、学ぼうと思えば家でも学べ、思索を深められるネット社会です。日本に留まらず世界に出て生きていくチャンスなのかもしれません。既存の枠は意味をなさなくなるチャンスなのかもしれません。今目の前にいる子どもたちには、そんなチャレンジと自由さが与えられており、幼稚園時代に心と体を使ってその根っこを伸ばしているのです。くれぐれも卒園後の社会が、そんな子どもたちの人間力を潰していく出る杭は打たれる式の社会からの脱却を図れるように、そのことだけを願ってしまう今の私です。
園長 松本 晴子
偶然と必然
出会いと別れの多い３月。私も沢山の子供たち、そして共に仕事をしてきた仲間を送り出しました。別れる寂しさ、出会いの喜び。春は毎年心を大きく動かす季節です。
幼稚園ではこの時期、来年度のクラス編成がなされ、一年の計画を立てていきます。でもいつの頃からか、このクラス編成への考え方が変わってきました。もちろん、子供たちのこれからの成長を想像し出会いや経験も含めて決めていきますが、いつも思うのは想像はあくまで想像である、という事です。「AちゃんとBちゃん、仲良くなりそうだ」などと考えていても、そうならない場合は多くあります。子供たちの心を結びつけるのは偶然と必然が混じりあった一時が鍵を握ってしまう事が多いのです。偶然面白いものを一緒に見ていた、とか、いつも仲良しの友達がお休みだったから一緒に遊んだ、とか、バスで隣の席に座った時のおしゃべりが楽しかった、とか・・・大人が特定の子供同士を交わらせようとわざとらしく振舞ってしまえば、子供たちは敏感にそれを感じ取り、気持ちは余計離れてしまうでしょう。緊張している時には穏やかな気持ちでいる友達、躊躇しやすい状況では天真爛漫な友達、退屈を感じているときには元気いっぱいの友達、楽しくて嬉しい時にはいつも笑っている友達を・・・どの子がどんな友達を求めているのか、求めていないのかは状況によって変化していくものだと感じます。そして、その繰り返しの経験の中で子供たちは自分自身と周りの人を見つめていくのだと思います。そういう意味では、出会いは春に限りません。毎日、同じクラスで過ごしていても心を動かす出会いが夏や秋にあったということが少なくないのですから。大人が操作してしまうなんてできっこないのです。それならば、大人はその時その時に子供たちが感じているものやその状況を大事にしようと寄り添う事。「嫌・寂しい・つまんない・面白い・楽しい・嬉しい・・・」そこからどう歩いていくのかは、子供たちの大切な旅です。途中出会う困難もほっとする喜びも全部子供たちの糧となっていくのです。さぁ、平成２４年度は、どんな一年になるのでしょうか？？ちょっとの必然を用意して、偶然の出会いをどう取り込むかを共に見つめたいと思う３月の終わりです。
小林悠子
