心の引き出しに入れたいもの
園恒例のこどもまつりが、11月3日(文化の日)ににぎやかに行われました。ここ数年ミニホットケーキを焼くことが、私の役割でもあり、楽しみでもあります。なにせホットケーキ大好き人間なものですから。シロップをかけて食べるとおいしさは倍増しますが、ここでは手に持って歩いても食べられるようにと甘めにたねを作って、シロップなしのシンプルなホットケーキにしています。
いつも門のところで、園バスから降りてくる子どもたちに「おはようございます」の挨拶をしているのですが、11月末のある日、一人の男の子(4歳児)から「園長先生、ぼくが望になって(5歳児になって)こどもまつりがあるとき、またホットケーキ焼く?」と門のところで立ち止まって、目を輝かせながら聞いてきたのです。「焼いて欲しいって思っているのなら、焼くかもしれない。」とちょっと遠回しな言い方をしてみました。君の想いが大事なんだというように。。。「うん!」満面の笑みで、彼は歩き出しました。自分の想いは伝わったというかのように。
時を刻むとはどのようなことかと思います。小さな出来事が心に深く沈んで、また浮かび上がってくる。震災の影響を色濃く受けた福島県内の認定こども園を訪れたとき、この2年半の時をさっと見ただけでは平和な日常にしか感じられない生活がありました。でも園庭は昔のままではなく、土を削って入れ替えをし、どうせならと起伏に富んだ庭にして、昨年半ばまで室内だけしか遊べなかった子どもたちに、体力と気力をつける工夫をこらしていたのです。地面はもう子どもたちの足の裏に踏み固められ、入れ替えた気配さえありませんでした。多くの保育者や職員が、家庭や職場で心くたびれている親御さんを補えるようにと、家庭的な雰囲気をモットーに、手作りの温かい保育を展開していました。さっと出会った子どもたちの心の傷は、短い見学ではわかりませんし、震災前後に誕生した1,2歳児たちは、この福島がふるさとなのです。だからこそ、今が大切です。ここで受ける神様からの見守りと、大人たちの笑顔と楽しそうに生活する姿が、未来の彼ら彼女らを生かすのです。そう思わされました。たくさんの大人が頑張っている。
園長 松本 晴子
状況は同じでも…
秋を見つめて来た人は秋を惜しんで晩秋と言い、冬を見据えた人は冬の兆しを見つけ初冬と言うのでしょうか。心の目がどちらを向いているかで、状況は同じでも、目に映ってくるものの受け止め方や解釈が異なってきます。落ち葉を集めながら、今は秋の終わりなのか、それとも冬の始まりなのかと、とりとめもなく自問自答を繰り返した11月が終わります。
ハプニングに満ちた子ども達の生活も、見守る者の目が過去に向いているか、それとも未来に向いているかで見え方が変わってくるのかもしれません。
★虫から「平和」に辿り着けるという展開がありました。
「先生、助けて~!!」 ブロックで作った鉄砲を抱えて、光組(4歳児)の男の子が3人やって来ました。「怖いよう。A君(4歳児)が追いかけて来るんだ。」 どうも「戦い」が始まってしまったようです。間に入った保育者にA君は止められ、怒って泣き出しました。「う~ん、そんなに一緒に遊びたいんだね。」「うん!」「でも、お友達は『怖い』って言っているよ。」「…。」3人の方に目を向けると、 保育者が止めてくれると言う安心感からか、床に図鑑を広げ、何やら話し込んでいます。「へぇ、『クマムシ』っていう名前のむしがいるんだ。」と感心していると、後ろから、「僕、『クマムシ』知ってるよ。お家のDVD に入ってる!!」とA君。その後、虫の話が続いて、カブトムシが飛行機より大きく描かれた挿絵に、「こんな大きなカブトムシがいたら大変だァ。」と大笑い。そして、何事もなかったかのように、なぜか4人は去って行きました。(保育者は置き去り…?!…)
★楽しむことを優先したら、絵に描いたような展開がありました。
何気なく毛糸であやとりを始めると、すぐに「何やってるの? 僕もやりたい。」とB君(5歳児)が寄って来ました。親指にかけて小指にかけたら、中指ですくうのをゆっくり見せると、その通り指を動かして、「できたあ!!」と目を輝かすB君。その声に「僕もやりたい!」とC君(5歳児)。あまりに簡単にできたので、あと一歩進めて、「ほうき」を教えてあげようかと欲が出ました。「よく見ててね。」と始めたものの、毛糸をつまんで引っ張るを2回繰り返した所で、「この先は少し難しい!!」という、心の声…。とっさに、引っ張っている所を先端とする「ロケット」にして紹介してみました。すると、2人は「ロケットだ、ロケットだ !」と大興奮。自分達も作って飛行(?!)させ、大喜びです。はしゃいで飛行する先に、ちょうどロケットに乗って宇宙に出かける子達がいて、2人は合流。(保育者はそっと消えました。)
虹組担任 深谷幸代