2014年8月号

お う ち


この夏に目にした映画に、山田洋次監督の『小さいおうち』があります。今話題の黒木華さんが女中役として出演し、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞をとったという話題があった作品です。昭和はじめの製薬会社勤めのインテリな家庭を舞台にした物語です。その当時としてはとてもハイカラで裕福な家庭でした。一戸建ての家の外観は洋風で、白壁に赤い三角屋根でフェンスに囲まれ、小綺麗な奥さんが絵に描いたような生活を送っているという設定です。かたや女中として仕えている少女(タキ)は、雪深い東北の出。学はなくても素朴にますっぐにつくして働いて、賢さを身につけていきます。困難は今と同じように幸せに見える家庭にも訪れ、この家庭でも一人息子が小児麻痺を患います。毎日毎日母親の代わりにタキちゃんにおぶさって、1時間かけて病院に通いマッサージを受けて家に帰ります。また、タキちゃんに病気の足をさすってもらうことが、機械にマッサージをしてもらうよりずっといいのは、あきらかでした。現代にはこの『小さいおうち』くらいの家は、一杯あります。ただ残念なことに、女中を雇う余裕はなく、機械やサービスが人間の働きを代わりに担うようになりました。服飾のデザイン性は高まり、宝飾品も庶民のものになりました。外出や外食は容易になり、ライフラインは整備され、どの子も学校で学べる法律や制度が整いました。どんなに暮らしやすい日本かと思いきや、余裕というものはほとんどないのです。国家財政上は破綻寸前ですし、人間性が向上している様子はなく、育てる者も育つ者も諸処こなすことで追い詰められ、追い立てられ、「足をさすってもらったな~」という肌タッチの愛を覚える時は、少なくなりました。今話題の幸せホルモン、オキシトシンなんて知らなくても成り立った時代から、手を肩に置いて(肌タッチして)話しかけるといいよ!と意識的に教えないとならない時代。「東大生がどれだけいても、たぶん日本はよくはならないのです。本当の賢さと強靱さと覚悟とは、別のところで鍛えられるのです。」タキちゃんを見ていると、そんな気分になりました。
園長  松本 晴子

8月の幼稚園


★一回だけだよ★
雨樋にスーパーボールを転がして靴の中に落としていた男の子達。靴に落とすなんて!と思わず笑いながら見ていると、小さな靴に落とすには微妙な加減が必要で、何だかんだと調整し、入ると皆で大喜びです。
少しするとA君から「もう、靴なんかに入れるのやめてよ」との抗議。きっとこの遊びはしたいけれど“靴”にいれるなんて嫌なのです。A君は友達がやめてくれるか待ちながら何度か抗議をして、最後に「あと一回だけだよ」と言いました。
靴入れをしていた友達の一人が「うぅん・・・」と返事。そして最後の一回を転がすと・・・子ども達は、靴を片付けてA君ができるようにしました。

私は、短いやりとりの中でもいろんな加減をしながら譲り合う姿にとても感心しました。言葉は大切。でも、言葉以外のニュアンスでも子ども達はやりとりをしているのです。一学期からの沢山の経験が、遊びにもコミュニケーションの中にも生きていると感じました。


★楽しみなことは★
夏休みの後半、夏期保育が始まりました。年少Bちゃんは通園バスの中で「(今日は)Cちゃんとブランコしようと思っているんだ」と嬉しそうに言います。久しぶりの幼稚園生活をそんな風に楽しみにしていてくれたなんて! 日常の一言が本当に響きます。


★誉め言葉★
皆でおやつを食べていると、気づいたDちゃんがゴミ箱を皆の前に持ってきてくれました。気づいたらさりげなく行動するDちゃん。「ありがとう!」とお礼を言うとE君からも微笑ましい言葉が。「Dちゃんも大人になってきたね!」

小林 悠子