2016年10月号

大切なことはちゃんとそこにある


ひたち海浜公園へ遠足に出かけた日がありました。子どもと保育者とで観光バスに乗ってのお出かけでした。久しぶりのさわやかな光の中で、3歳から6歳までの子どもたちが、異年齢で手をつないで、リュックを置く場所まで歩きました。5歳児のお姉さん、お兄さんは、当然のように幼い3歳児、4歳児のクラスメートと手をつなぎ、「もう少しだからね。」とか、これなーに?というそぶりに、「それはどんぐりの帽子だよ!」と応えてあげたり、他者との出会いを体験していました。もちろん手を振り切って走っていくTくんを、まって~と追いかけていく。。。なんて姿もよくあることです。「もう手に負えないよ。」と思ったりもします。こんな風に人との関わりを、ひとつひとつ味わって積み上げていくことは、社会性を育てていく上で、とても大事なことだと考えています。

ところが、こういうことをやるのは、時間がいることなのだと思うのです。そばにいる大人も、そんなやりとりに気づける距離感が、必要ですね。子どもの側から「たすけて~」という信号を出したときに、ほどよく対応できる距離感。かまいすぎているか?放っているか?ではなく、その子の必要に丁度応える。難しいさじ加減です。それでも水戸幼稚園の遠足や生活の流れは、どこをとってもゆったりめ。だからこそ、人間らしいやりとりや、Bちゃん、Cちゃんから見た他者の観察や事象の観察が、結構出来ているようなのです。ところが、遠足時見かけた別の園の保育方法は、だいぶ違っていました。すごく整然としていて、時間と大人に追い立てられるように、「はい、はい、はい」と進んでいき、お子さんたちもそれに従っていくことが、出来てしまっているのです。すごい。見た目はずーっとしっかりしていて、きっと実際もしっかりした育ちなのだと思います。水戸幼稚園の子どもはもっと依存的。手がかかる。にぎやか。やんちゃ。人の話を聞いていない。自己中心的に見える。でも大切なことはちゃんと育っている。適度な幅をもち、主体性の芽が伸び、人を信頼し、社会をよりよい方へ持って行きたいという善意に満ちている。子どももそこに共にある大人も、今を生きているんです。そして、その今は一回きりで過ぎ去っていくのでした。

園長  松本 晴子