幼稚園の園庭の桜が、早々と咲き誇っています。丁度幼稚園は春休みで、完全休園の週末を含む4日間の間に、花開いたのでした。昨年庭師の方々が枝ぶりを整えてくださり、大切にいたわられて穏やかに佇んでいます。ムクドリがギャーギャーと声を上げ、花をついばんで飛び交っては愉しげです。なんて穏やかなのだろうと、大きな木を見上げて思います。昨年の初夏には剪定もままならない桜を見上げて、不安な気持ちがありました。大きな枝が落ちてきたらどうしよう、台風が来たらどうなるのだろう。待ちに待って、樹木の気持ちがわかるかのような木の専門家に任せた後の木々の姿を見て、安心感が広がったのを思い出します。
新型コロナウイルスの世界蔓延のニュースが流れる中で、私たち保育の現場で働く者も、お子さんの養育をされている方々と同様に、気を張った毎日です。丁度気軽な移動も不向きな状況で、その場に留まる生活スタイルに、まるで樹木のよう。。。と思い至りました。今の人間の状況を今までの経験をもって、整理し整えて見守ってくれる存在は、ないように感じる状況です。でも、東日本の震災の時に、放射能を浴びながらもそこに生え続けていた木々のように、枯れもするけれど時間をかけて新しい命も芽生え、またその苦難にただただ耐えて、今も緑をたたえている木々も福島にはいっぱいあります。そんなことを思います。今与えられた状況をおろおろ、あわあわしながら誰かに訴え、自問自答しながら受け入れ、考えて智を結集して、できることをしていくのが、人間です。
3月31日には、5歳児で預かり保育を利用していたお子さんたちが、保育最後の弾んだ声をあげながら門を出ていく姿がありました。子どもたちが今を生きる存在として、今を味わい尽くしている幼稚園時代だったと、大人は眺めながら、子どもたちは「まったね~」と気軽に手を振りあい、大人をただ単純に元気にしてくれるのでした。
園長 松本晴子