2012年4月号

やってみようかな


幼稚園のおいしい給食が始まりました。働いている身としては、毎日のお弁当作りからたまに解放される火曜日、木曜日は至福のひとときです。5歳児になった子どもたちはえじそん箸や普通のお箸を使用して、使い方を習得していくことにしています。そうすることで、年長児になった自覚や、難しいことにチャレンジしている自分を誇らしく感じることが出来るようになっていきます。
ある日のこと、Uくんはお箸を忘れてきました。普段はえじそん箸を使って楽しく食事をしていたのですが、その日は浮かない顔でした。「お箸ないんだ……。」という声に、園のものを示したのですが、首を振るばかり。「だってまだできないもん……。」というひとりごとがかすかに聞き取れました。それでも私はお箸しか渡せないことを話し、こう伝えました。今園で飼っているハサミムシを毎日見ているよね。ハサミムシは人間に捕まえられて、このケースの中に入れられて生きている。本当は広い庭か草むらのほうがいいな~って思っているかもしれない。でも今はケースの中。ハサミムシはそこで頑張っている。Uくんも今はお箸しかないんだから、そこで頑張るべきではないかな。ハサミムシだけに頑張らせていてはずるいよ。彼は何か感じたようでした。しばらくするとお箸をもち、肉団子を見つめています。でもまだ手は動きません。そのとき隣に座っていた友だちが、「なんだ、持ち方あってるじゃん。」と声をかけたのです。友のほうはお箸を使って食べていました。「ほんとだ!」私もつぶやきました。結局Uくんはお箸で全部完食して、おかわりまでしていきました。満面笑みで、私とほかの5歳児さんたちとの会話に加わって、なんとも楽しいランチになったのです。
5月の風の中、やってみようかな……。という気持ちになるチャンスに巡り合えるように、祈り、支えていきたいものです。
園長  松本 晴子

期待と不安を胸に


また、新しい一年が始まりました。
長年この仕事をしていても、何事にも一生懸命で一途なお子さんたちの「おもい」に触れる度、心洗われ、「私ももっとしっかり生きねば」という思いが湧いてきます。人として対等であることを大前提とした小さな人達(=「子ども達」)との生活は、一見浮世離れしているように見えて、実は深く人としてのあり方を問われてくるのが不思議です。大人との会話やお子さん達の呟きなど、何気ないエピソードから垣間見させていただいた真実を、少しでもお伝えできたらと思っています。
【1】「お前、そんなんで本当に望組さん(年長組)になれるのか?」  春休み中言われていたというあるお子さんは、始業日の夜、「ほら!! もらえたよ!」と、父さんの帰宅を待ち構えて緑色のバッチを誇らしそうに見せたそうです。お父さんの言葉を重く感じ、子さんは心の中ではどんなにかドキドキしていたことでしょう。バッチをもらえたら一気に心が晴れてルンルンルン。笑顔が目に浮かびます。(良かった…ホッ!)
【2】「ママは?(=お迎えまだなの?…)」  新入児は不安になります。いつ帰れるのか、見通しの立たない不安から何度も保育者に聞かずにはいられません。やっと、「先生、みなさん さようなら」と挨拶を交わしテラスへ。お母さんがいるとわかると顔がパッと見たことがない程ほど明るくなって、その胸に飛び込んで行きました。そんなにお母さんが好きなんだ…。やはり、お母さんの代わりにはなれないんですね。(残念!!)
フリー担当  深谷幸代

つくしっこクラブ
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