ひそやかなもの

 水戸芸術館は音楽ホールと演劇ホール、そして美術ギャラリーがあります。今の美術館は現代の作家さんをよく取り上げて、その方の考え方や思想を交えて、作品展示を行うようです。望組が見学に伺ったときは、内藤礼さんという女性の方の作品群でした。内藤礼さんはとてもひそやかな世界を作り出す作家さんです。『あかるい地上には あなたの姿が見える』というタイトルは意味深いです。自然光だけでの展示を通して、子どもは 明るい と ほの暗い 空間。白い壁にゆれる白い風船の影の存在。光の揺らめきや微風に気がついていきました。案内してくださるスタッフの投げかけが「こちら側から向こうを見て、何か感じたことある?」というような感じで、子どもはしばらく考えて素直に発見や気づいたことを口にして、それをまたスタッフさんに認めてもらえるので、とてもうれしそうです。内藤さんは、私たちはまず誰もが太陽からの自然光を受けて、その中に立っている(生かされている)。そのことの恵みを表現しているようでもありました。床やガラス板。その前や上に置かれた木製の人形や水の入ったガラス瓶を眺め、今度は横からその境目を眺めてみると、境目の向こう側の世界が見えることを、何人かの子どもたちと共有しました。向かい合ってのもう一人の私がそこにいて、向こうの世界から見守ってくれている。そんな感覚は、とてもすばらしい体験です。子どもは「あっ!」と声を上げるだけですけれど、目をほそめ、耳をすまし、声をひそめる体験は、思った以上に豊かでした。

 

素直に向き合った子どもたちに感激すると共に、このような体験を用意してくださる芸術館に感謝です。

アートの糸口は、ほんのささいなことにある。そう思わされました。

園長 松本晴子

つくしっこクラブ
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