2010年1月号

春風の微風に包まれて


1月の終わりに、『劇団風の子』の方々が、「おまつりぴーひゃらどん」の劇を園に見せに来てくださいました。例年のごとく、日々の鍛錬と子供と子供の文化を愛するが故の、素晴らしい1時間でした。
その日に気がついたことがありました。最近落ち着かないな…と感じていたM君、S君、U君が、観劇後の昼食時、落ち着いて諸事万端整え食事を楽しみ、片付けなども当たり前のようにやりおおせたのです。同じクラスという訳でもないのに、同じような姿が見られたことに、私は何とも言えない不思議を感じました。気持ちがしっとりしているのです。私は劇中の彼らの様子を見ていました。たっぷりとお話の世界に入り込み、気持ちがいいくらいからからと笑い転げ、味わい尽くしていたのです。
あ…、茂木健一郎さんのいうところの、フロー状態だったのだと気がつきました。集中しているけれど、リラックスしている状態。人間の脳が最も活発に働き、喜んでいる状態です。その心地よさが、その後の行動を安定させているのかもしれないと、思えたのです。この空間に自分は許容されていると、確かに感じたのでしょう。また共にその場で喜んでいる他者との空気感が、自分の存在を良きものとして受け容れられる素地になっていたように思うのです。
ということは、園での生活は、普段はかなりストレスを受ける環境にいるということでもあるのです。集団よりもマイペースで遊びこみたい場合は、そのことを時間、空間、人の面で支えたほうがよいと、再認識させられました。
年に1回のこの観劇会は、私の心にも温かな春風の前触れを届けてくれます。感謝!
園長  松本 晴子

待ち合わせ


A君と外で遊ぶ約束をしました。「待ち合わせしよう!」とA君(3歳児)。どんな遊びか聞いてみると、私がどこかに歩いて行って、後からA君が私のところにやってくるという遊びでした。実のところ、私にはこの遊びのどの部分が楽しいのか、いま一つ分からず、私の反応でA君をがっかりさせてしまわないかが気がかりでした。分からないながらも、A君を“見つけた”時には大きく手を振って出会いを楽しみました。何度か続けた後、A君はルールを変更、お互いに違うところに走って行って出会う形になりました。更に何度か出会った後、A君は「かくれんぼしよう」と言いました。私はついいつものように色々なところに隠れました。しかし、広い園庭の端までを使ったかくれんぼはA君にとって少し大変だったのか、しばらくすると「この遊具だけで隠れよう!」と言うので、狭い範囲でのかくれんぼになりました。
お互いに分かっていて何度も出会っていく待ち合わせごっこ。ちょっと身体を動かせば見えてしまうくらいのかくれんぼ。
年少さんとはいえ、3学期になると友達関係も出来てきて、友達と遊ぶ姿に嬉しくなる場面も増えてきます。それは子どもの大きな成長です。けれど、そこには緊張や苦労も抱えている筈。かくれんぼの途中で、B君達が「僕たちもかくれんぼやってるよ」と混ざることを誘ってくれたのですが、A君は断ったので、まだまだ大人との個人での遊びを望んでいることが分かりました。広い友達関係に入っていくこの時期、個人の安心した遊びの時間の両方をバランスよく持つ事が大切なのかも知れません。
小林悠子

つくしっこクラブ
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