小さな畑から
砂場の片隅にあった小さな畑。畳一枚分の広さしかないのですが、今年は初めてじゃがいもを植えてみました。3月の終わりに小さく切り分けられた種芋が、今年の遅霜をすりぬけて芽を出し、変わった草だと思うのか、せっせと抜いてくれるYくんから守るのに、ネットを周りにかけたのが5月連休明け。砂場の水道でじょうろに水を汲んで、熱心に葉っぱにかけてくれるRくん。葉っぱに水をあげると、(はっぱも人も)喜んでくれるという概念がインプットされているかのように、満面の笑みでやってくれます。かなりの水が投入されていましたが(笑。)6月、紫の花が咲きました。この頃には私達もこれがじゃがいもの葉っぱなのよ、花なのよ!と、子供達にアピールしやすくなります。「えー、見てみてじゃがいもの花だって!きれいだね。」と、女の子達が集まってながめていきます。 そして、7月半ば、収穫をする時がやってきました。参加したい子供達が30名くらいはいたでしょうか。一畳ぶんの地面を囲んで、順番に保育者がほぐした地面から、茎を持って抜いていきます。手も土だらけにして、隠れているじゃがいもがないか探ります。
この時の体験で私がはっとさせられたのは、子供達が大きいおイモと同様に、小さい小さいおイモをも嬉しそうに手渡してくれることでした。大人ならこんな小さなものに価値を置くでしょうか。特に経済至上主義のまっただ中に生きている現在です。なのに、嬉しそうに大も中も小も同じように慈しんでみせる目の前の幼子に、「参りました。。。」と、自分の内側にある愚かさにはっとさせられたのです。子供達に価値を示し植え付けてしまうのは、大人です。本来の子供はずっと伸びやかで、しなやかで、自由なのですね。
「きっとこの小さいじゃがいもも、おいしいよ!」と言葉をかけると、「よかった。」と言いながらスキップをして戻っていったMくんの姿が、目に焼き付いています。もちろん、どれもねっとりとした新じゃがのこくのある味わいで、クッキングの日は大賑わいでした。
園長 松本 晴子
捕まえたよ!
最近毎日のように男の子達と虫探しをしています。はじめは「クワガタがほしい」との事で探し出しましたが見つからず、やっとのことでカミキリムシ虫を発見。大事に持ち帰ったA君でした。次の日はカミキリムシ探しから。「昨日はこのあたりにいたからまた探そう」 しかし見つからず、やっとバッタを見つけました。でも魅力的な大きなバッタは草の中にまっしぐら。簡単にはつかまりません。
次の日も朝から張り切って虫探し。狙いは昨日の大きなバッタ!クワガタから、カミキリムシ、そしてバッタへと興味が移っていく事に私は面白さを覚えながら一緒に探しました。男の子達は前日見つけたあたりを行ったり来たり。少しすると念願叶って、バッタ出現!探す大変さを感じ始めているその目の前に、バッタがとんできた時の驚いた表情は何とも言えません。今度は草の中に逃げられないように、みんなで広い地面にバッタを飛ばせて、やっと捕まえました。「やったぁ!」「見せてみせて!」「僕の箱にいれて!」…
一匹の虫に出会うまでに、子供達は色々なおしゃべりをしつつ自然をじーっと見つめる時間を持ちます。蜘蛛の巣が重なっていてびっくりしたり。葉っぱに穴が開いていれば虫がいるかもしれない、大きな葉っぱなら葉の裏にいるかも知れない、この虫は何の仲間だろう・・・と考えたり想像したり。時には様子を見に来た友達から情報をもらったりもします。何より、虫探しは諦めず根気よく探そうとしなければなりません。
5人がかりで捕まえた一匹のバッタ。やっと捕まえた時、子供達の間に漂った空気。この空気が子供達一人一人の中に大切なものを育てているのだと私は思っています。子供の遊び、擬似ではない実体験の遊びの大切さと面白さをつくづく感じた瞬間でした。
小林悠子