寛容な者としてください
2月末はひなまつり会があったりして、グループの子ども同士の距離が一段と近づく時期です。水戸幼稚園では生活クラスとして異年齢で暮らします。そのために大人も子どもも多様性の中で苦労するのですが、苦労することを怖れず、当たり前として向き合う生活をあえて送るように励みます。必死に過ごしてくる保育者と子どもたちは、1学期こんなことで悩んでいたんだ、気が重かったんだということを、この3月には思い出せないくらいの状態になっています。なんとも幸せを感じられるように、人間はうまく出来ているのですね。大変だった記憶は薄れ、今の現状を喜べる所へ行けるのです。でも、それは日々を必死に歩き、ときには走り、必要によっては立ち止まって思い巡らすことをしてきているからです。
長縄跳びを発表する4歳児のTくんは、リズムに乗ってジャンプする力はあるのに、まだ縄の回転を意識してしまって、うまく跳べません。人の目が気になるので、クラスメートに見られていると余計に体が固まります。この循環を抜けるのに、言葉が飛びました。
「前に跳んでいかないで、その場所で跳ぶんだよ!」T君はやりながらそのクラスメートKくんの言葉を聞き入れて、その場で跳ぼうと努める姿がありました。この二人は普段は、そんなことわかってるよ!(一言多いんだよ)となりがちな仲間関係なのですが、実は相手を気にかけているからこそ言葉が多くなってしまうことが、見えてきます。そしていざ困難な時、TくんはKくんの言葉に支えられていたのでした。
どんな物事にも両面があり、捉え方次第で、善くも悪くもなります。そのことを3年間で体に刻み、心に刻んで、また新たな生活場面に旅立ちます。神さま、どうか大人というものにに育っていく過程で、寛容な心の世界の広がりとおもしろさをまた体験させていってください。相手を見下し追い詰めて自分の位置を堅持するより、神さまが決め、与えられた場所で咲くことを求める者としてください。目立たない場所で咲いていたとしても、花本来の美しさは変わらないのですから。
園長 松本 晴子
春の訪れを感じる中で…
子ども達は何か見つけると、よく、「ねえ、見て!! 見て!」とか「来て!! 来て!」と、声を掛けてきます。見せたがったり、見てもらいたがるのは、大人(母・保育者)にとってもそれが喜びとなるのだと信じているからでしょう。大人も喜びを共有したいと願っているはずですが、そこ迄信じているかといえば自信がありません。問われなければ、語らず終わってしまうことは無いでしょうか。どんなに小さなことでも、もっと素直に真っ直ぐに(しかもマメに)大人も自分の思いを子ども達に伝えてみませんか。そこから意外な展開があるかもしれません。報告を楽しみにしています。
▽昨年、園庭に落ちていた枝を拾い上げると、「先生どうするの?」と、A君が声を掛けてきました。「水に差しておこうかな…。」「どうして?」「もしかしたら、花が咲くかもしれないから。」「えっ、本当に花が咲くの!!」と目を輝かせました。それからというもの、日課のようにせっせと枝を届けてくれたA君。明らかに枯れている枝もありましたが、「入れといて!」とのこと。中でも大きな枝はペットボトルに挿しておきました。
そして、3月に入ると、A君の期待は現実のものとなってきました。つぼみが膨らみ始めたのです。「やったあ」歓喜!! 4月には、2本の枝に薄ピンクのきれいな花が咲きました。
「あ~ッ、残念。これ迄の命だったか…。」と思われた折れた枝も、花を咲かせるという事実に2人して心踊る体験をしました。A君は今年も落ちている枝を見つけては届けてくれています。(もう、10本…。)まだ、A君の中でまだ続いている桜への思いが嬉しい今日この頃です。(今年も咲きますように…。)
満3歳児担当 深谷幸代