2013年4月号

日々新しいことがある


新しい子どもたちが入園してきました。一年間授かったメンバーと一緒に丸ごと向き合って励んできて、一年が終わって、またすぐ新たなメンバーとそれぞれの課題の中を走り始めます。お子さんのペースで居場所を見つけていく園の方針ですから、園に漂う空気は穏やかなほうで、それならとやってみたいことを試し始める新入の方の姿がありました。いたずら的なものを挙げてみると、男子トイレのボタンを長押しして、下に水を貯めて溢れるのを、期待をもって待つ。手洗い水道もミニプールのよう。水槽のオタマジャクシが机の上に並べられていたこともありました。サインペンでアイボリーの壁に線を書き出したのは、壁にカラーテープで線路を表現して製作している、4歳児のおもしろそうな作品を見たからでした。遊び場水路に数人の新入児が、長柄スコップで土をせっせと入れて埋め立てようとしているのは、道路工事のイメージのようでした。
「あんなに入れたら、砂場の水道の水が流れなくなるんじゃないかな~今日は大雨も降るっていうし。。。」
素晴らしい共同作業なのに、勢いに心がついていけない自分がいることに、ちょっと愕然です。
こんな時は、ある本の場面を思い出すように心がけています。愛読書である『アンの青春』という本です。デイヴィーという双子の幼い男の子が主人公のアンの家に引き取られ、生活する中で、毎日いろいろやらかしてくれます。例えば妹のドーラがお客さんが見えるというので、お気に入りの白いドレスを着ておめかしをして待っていたのに、家人が気がつかないまに、デイヴィーに呼び出され、家畜の飼育場の中に落ちるはめになる。このくらいすごいことが、しょっちゅうあるのです。家畜のフンまみれになって泣きじゃくるドーラ。デイヴィーはこう言います。「だってドーラが洋服が汚れるからって、僕の泥遊びにつきあってくれなかったんだもの。それに僕はやったあとじゃないと、悪いことだったんだってわからないんだ。。。」そして彼に向き合うアンという16歳になる少女。彼女の器はかなり広くて、そう簡単には感情の嵐にとりつかれません。ユーモアをもって、話を聞けるのです。なぜかといえば、彼女は幼少時代に自分の個性ゆえに、まわりから受け入れてもらえていないという想いを抱えて生きてきていたから。そしてそんな自分を受け入れてくれるマシュー小父さんに11歳にして出会えたから。120年前のカナダの片田舎の幼子は、今の日本の幼子の本質と、なんらかわっていないことは、私にとっては力強い示唆なのです。
あ~私はまだまだ器が小さいな~。
園長  松本 晴子

作る 拾う 小さなきっかけ


新しい年度が始まり、早ひと月が過ぎようとしています。進級児が作り出す安定した雰囲気に支えられて、新入児達もどうにか自分の居心地の良い場所を探し当てつつあります。幼いながらも、自分の気持ちを整理し、切り替え、自分で自分のやりたいことを決め取り組み始める姿に拍手です。
自転車の補助輪のように、いつか私を必要としなくなるその時を楽しみにしながら、今は寄り添い、必要だと思われる援助を試みる毎日です。

★「泣いていてもいいけれど… じゃ、いつ遊ぶ?」 A君との場合
入園式の次の日の朝、泣いている新入A君と話し始めました。「ケーキとお煎餅、どっちが好き?」「ケーキ…」「そうなんだ。」 どっちが好きかかという単純な質問が繰り返えされる中で、表情が和らいで、笑顔がこぼれてきました。数分後、お味噌汁が好きだとわかって、「私は、もやしのお味噌汁が好き!! キャベツのお味噌汁は甘いんだよねえ。」 2人で笑顔を見合った次の瞬間、A君は突然私に背を向け森の機関車(固定遊具)の方へ走り出しました。急いで後を追って、窓から手を差し入れるとA君はゲラゲラ笑い出し、こちらまで楽しくなってきました。不思議なことに、その一部始終を泣きながら傍で見ていた子も、影響を受けていました。ハッとして泣くのを止め、「僕も遊ぶ!!」と宣言し砂場の方へ向かっていったのです。泣きながらもレーダーを働かせ、考えていたんですね。

★「どんな状況でも互いに笑顔になれる展開があるんだね!」 B君との場合
新入児B君は目に入るものを次々手に取り試します。4月25日、B君の手には角材のように細長いダンボールが握られていました。きっと、これを振り回すだろうな。どんな働きかけをすれば、スムーズに取上げられるだろうか…。ニコニコ見守る風を装いながら、誰もこの棒に当たりませんように…云々。私の頭の中では様々な思いが渦巻いていました。すると、突然左背後から、「バン!」「バン、バン!」と銃(指のピストル=チョキ)が乱射されたのです。B君は間髪入れず反応し、「ウ~ン」バタリ!! 床に転げてやられた振りをしたから、たまりません。その場に、笑いが沸き起こりました。そして、あっという間にB君は復活し、何度も撃たれては、笑いを取ったのです。誰かに笑ってもらえると心がつながったみたいで、B君は嬉しっかのですね。わたしもユーモアのセンスを磨き、タイミングをねらってもっと一緒に笑いたいな。
フリー  深谷幸代

つくしっこクラブ
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