植物との物語
5月になって珍しい植物を理事さんから頂きました。『からしだね』です。耳慣れない名称かもしれませんね。聖書に出てくる植物です。意識してもらうために、スタッフにネームプレートを作ってもらいました。このからしだねがきっかけで、そうだ!外の植物にもプレートを付けてみようと思い立ち、主なものにぶらさげてみました。すると、木に名前があることに気づく姿。自分の知識と照らし合わせたり、知識を増やす姿。字が読めないSくんはプレートの意味を想像して、「勝手に花をとらないでください。」と書いてあるんでしょと、推論してくれました。自宅にある花の名前を教えてくれる姿もあります。あらためて、きっかけっておもしろいものと感じます。
ある日から木登りにチャレンジする年長さんが現れました。登りたいのは『びわ』の木です。自力で登れるまで、枝にしがみつき、足の裏を木の又まで持ち上げ、腕の力で体を持ち上げられれば、一番下の枝に体が乗ります。びわという木はじっとその子を受け止め、たち続けています。どうにかやっと登れるようになった子どもは、木のにおいも、堅さも、ざらつきも、ぬくもりも、葉っぱのざわざわと鳴る音も、ながめる風景も、まるごと体躯と心のひだに入れていくのでしょう。何処まで登れそうかなというのも、枝のたわみ方で自力で判断していくこと。木と一体となって考えていく体験です。
身近な自然事象にふれる体験は、考えればあちこちにありますが、生活の中で当たり前のように体験することが、昨今は難しいです。人間が現れてから近年まで、自然の中の一員として畏れをもって、謙虚に感謝しながら生きてきた日本人。そういうつながりを断ち切られて、突出した者として奢って今を生きていることを、覚えます。人間だけの変化のスピードは狂ったように速くなり、自然界は警鐘をならしてくれています。気づけ気づけと。。。名前のプレートが園庭に共にある植物との物語を意識していくきっかけになるかどうか、これからも子どもたちのエピソードを探したいと思います。
園長 松本 晴子
トトロに飛びついてきたのは3歳児
園生活の流れが出来てきた5月下旬から、「アトリエ トトロ」と名付けられた描画や造形のコーナーが今年度も始まりました。お知らせがあると、2階の絵本のコーナーにやりたい子がだいたい20人前後がやって来て、この活動に参加しています。月に何回か開かれる小さなコーナーですが、今年は例年になく多くの星組(3歳児)の子達が連れ立って、楽しげに足を運んでくれています。ちなみに、昨年の常連さんは望組(5歳児)の女の子達でした。今度はどんな取り組みをするのだろうかと、毎回楽しみに準備しています。今回は前向きな取り組みだった3歳児さんのエピソードです。
★「1本1本の線が喜びを与えてくれるなんて…。なんて幸せなんでしょう!!」
Aちゃんは笑顔で、まず「何するの?」と聞いてきました。「じゃ、グルグルする?」「うん!」そんな簡単な会話の後、渦巻き描きに精を出しました。一つ描きあげる度に「できたあ!!」と声を上げ、また一つ渦巻きを足し…「できたあ!!」。画面は、じきに渦巻きで埋まって完成。Aちゃんは笑顔で「フ~ッ」と一息。次の日やってきたAちゃんは、今度はお団子を同じようにして描き続けました。(二日目は連れの仲良し君も「今日は一緒に楽しもう!!」と隣でお団子屋さんになっていました。)
★「おもしろい『お話』が出てくる出てくる…。描くことは話すことなんですね。」
B君はスーッとやって来て、描き始め、「これおばけだよ。…これタコ…云々。」と話しながら笑つつ、片付けが始まっても「運梯にぶらさがった!」絵など精力的(!?)に描き続けました。「また、明日もやるからおいで。」と声を掛けられ、「うん。」と納得。 次の日も、お風呂に水(=お湯)を一杯にして「ジャボン!」と入ったところ、落とし穴に落ちてしまったところ、お化けとの追いかけっこなど…どんどん描き、気付けばまたお片付の時間。「アッ、ぼくまだあそんでない!」と慌てて去っていきました。
フリー 深谷幸代