私たちに出来ること
夏です。保育者も交替で研修に出たり、休暇をとったりしながらリフレッシュすることは、とても大切なことです。
先日、茨城県内の私立幼稚園の保育関係者が900名ほど集まっての研修会がありました。子どもの今を支えるというテーマで、目の前の子どもたちの抱えている課題を見つめてみました。そうすると、大人の目の多さと距離感の問題。一方大人の目の過疎化も浮かび上がってきました。そうですよね、少子高齢社会で、一人のお子さんを意識してしまう大人の人数は、必然多くなります。教育にかけるエネルギーは大人の意識によって大きくもなり、国家の補助が少ない日本では、各家庭の努力で成り立っているようなものです。一方、子育ては個室化しているので、下のお子さんを抱えている方は、上のお子さんを優先すれば下の方がぐずり、下の方を優先すれば上がやきもちや我慢のフラストレーションを出す。まったくもって大変です。そんなこんなで、時には子どもをYouTubeにまかせて、自分はメールや電話のおしゃべりに興じたい。その間も子どもに危険のないように、先回りの注意や指示はつい口から出てしまいます。ASIMOが代わりに見ていてくれたら、どんなに素晴らしい社会かと、HONDAは思っているかもしれません。そう、日本の子育て環境は、大変厳しいものになっていることが見えてきます。
さて、幼稚園では子育て真っ最中のおうちの方に、何を伝えられるのでしょう。園に行っている間は、ちょっとリラックス出来るかもしれません。園から帰ってきたお子さんの姿や口ぶりから、楽しみがあったみたいと伝わってくるとほっとしますね。幸せそうなそぶりを見せてくれると、やはり嬉しいものです。では喧嘩は?ある子が本人の理由でかっとなって怒ってたたいて、相手が泣きだしてしまう…。そんなパターンが続いてしまう。気が強いか弱いかは持ち味なのですが、勝ち負けの視点だけで見てしまう大人が多いと、気が強い方がメリットがあるように見えてきてしまうなんてことも、起こります。保育者は知っています。いつも泣いてしまうBちゃんが、心がまっすぐで相手の悲しみをも感じやすい心を持っていることを。いつも強い口調で大手を振っているDちゃんが、実は汚れるのが苦手で言葉でそのことをカモフラージュしていることを。人の心の中は白黒で割り切れず、グレーの部分も持っている。弱い部分があって苦心しているんだということを。
そんな中、前述の研修会でのメッセージが強く心に響きます。『私たちに出来ることは、ただ、子どもの安心できる存在になるということ。安心な場があれば、好奇心を健全に発揮して、人間は伸びていくことができるのです。』
園長 松本 晴子
7月の幼稚園
★黒い虫一匹★
A君が変わった虫を見つけました。黒っぽくて細長くつやつやした虫。触り慣れると、今度は砂山に乗せて見たり、そのまま歩かせたり、ひっくり返してみたり、色々な試みをします。A君が地面を叩いてみた時、虫は背中ではねるように飛び起きました。「(背中で)はねた!」
その後は、どのタイミングでどんな風に地面を震動させればさっきのようにとび起きるのかの模索です。それを見て友達何人かが真似をしようと、どんどん地面を叩きました。するとA君は「あんまり皆でやらないほうがいい」と言いました。友達はその言葉を聞いて、今度はなんとなくの順番で試しました。
“加減しながらその虫を知る為に色々な試みをする” “誰かが無茶をしそうな時は誰かがとめる” “友達の考えを受け入れつつ遊ぶ” そして“やりとりを見たり聞いたりしている友達もいる”
数分のやりとりの中でどれだけの事を子ども達は学び共有したのでしょう。遊びの世界は深い…。
★何気ない中で★
「先生、雑巾ありますか?」と年少Bちゃん。聞くと水筒の水がこぼれたとの事。自分の後始末をしようとするなんて偉い!と私は感心しながら行ってみると、BちゃんはC君に雑巾を渡しました。水をこぼしたのはどうやらC君の様です。C君は雑巾を受け取ると床を拭き、ほんの少しぬれたBちゃんの椅子も拭きました。二人は何事もなかったように自分の続きの事を始めました。
別のある時は、年長の女の子二人がおしゃべりしながら園庭を歩いていました。水道の前を通ったとき一人が出しっ放しだった水をとめ、また歩いて行ってしまいました。私は急いで「ありがとう!」と離れた所から声を掛けました。どちらも何気ないやりとりです。でもこれができるってすごいなと思ったのです。私たちが気づかないところで(評価の対象にならないところで)、子ども達は実に立派なことをしていることを信じたいと思います。
★うがい★
D君とEちゃんが水道で並んで下を向いています。そっと見ると手で水をすくってうがいをしているのです。離れた所から水筒を持ってこなくても!手ですくえばすぐうがいができる!どこで見て覚えたのでしょう?!並んだ二つの小さい背中の後ろで笑ってしまいました。
小林 悠子