2011年6月号

きっかけ


今年も枇杷の実がなりました。当園の理事長が幼い頃食べた枇杷。その種を土に埋めたことが始まりの木です。気がついた5歳児がビールケースを運んできて重ねていき、股の所に登れるようにして木登り開始です。脇で見守る保育者。3歳児も4歳児もやってみたい子は「すごーい」というまなざしで後ろにちゃんと並んで待っています。今年は苺同様「見るだけ枇杷」なのですが、それでも誇らしげに収穫していく姿が、とても頼もしく見えました。登るお子さんも普段はおとなしめだったり、マイペースだったり、リーダー的であるとは限りません。でも適材適所なのでしょうか。この体験を続けることによって、何かを越えて自信がつきます。初めて一個収穫できて、「やっとおれも男だ!」とつぶやいた男児がいたと聞いて、彼にとっては冒険を越えた自分の姿をメタ認知する力が育ってきたのかもしれないと、非常に驚きました。
この夏はどんな冒険が待っているのでしょう。この冒険は大人がイメージするものとは違います。でも笑ってはいけません。一緒にそのドア口に立ってください。そしてお子さんの心を強く動かすものと、出会ってみてください。
園長  松本 晴子

片付けの魅力


水戸幼稚園には小さなコーナーがあります。そこではピンボードや積み木、ネフスピールやケルンモザイクがあり、発想次第で様々な遊びが出来ます。
その日は、年少のA君が床に一杯ばらまいた色板を年長のBちゃんとCちゃんが片付けていました。いつもは色んな形が混ざった状態で2ケースに入れます。でも二人はとてもこだわって、Bちゃんが色・形をそろえ、Cちゃんが「次は青い三角ね」等と言って、一つ一つ並べ入れていきました。一つの形で何十個もあるのですから、大人でも根気がいります。でも二人は「もう疲れた。大変だよ」と言いつつもやめません。誰かが呼びに来ると用事を済ませたり、水を飲んだり、トイレに行ったりしながらの作業。遊びの時間はほぼ費やした事でしょう。あんまり延々とやっているので「大変なのにどうしてやめないの?」と聞いてみました。「だってA君に一緒に遊ぼうって言ったの私だから仕方ないの。それにきちんと入れた方がいいもん」とBちゃん。自分より小さい子が片付けをせず次の遊びに移ってしまう。よくある姿ですが、怒らず攻めず自分の責任も感じて後始末をする姿には本当に驚いてしまいました。
二人は頑張りました。でもその日は最後の頃に片付けた板が崩れてしまいました。私は丁寧に片付けた事を褒めました。すると「先生、こうやって入れれば1つ(のケース)で入るよ」と気持を切り替えて胸をはり、帰っていきました。
数日後。同じような状況で・・・「ちゃんと片付ける!」とA君を連れてきたCちゃん。まるでお母さんのようです。大変な思いをしたので今度は片付けてもらうことにしたのでしょうが、A君は天真爛漫。長く続きません。結局二人はまたきれいに並べて片付けて…
それからというもの、色板がきれいに並んでいる事がしばしば。きっと二人がおしゃべりしながら片付けているのでしょう。文句は言っても心のどこかで相手を許すゆとりを持って。それから法則を感じながら並べる心地よさの魅力にとりつかれて。
小林悠子

つくしっこクラブ
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