2011年4月号

めまぐるしさから学ぶ日々


3月の始めに、近未来である4月の幼稚園を想像したとき、現在のような重い暗雲をイメージすることはありませんでした。なんやかんや、政治や経済や福祉や教育のことで、日本はもうこのままじゃ行き詰まってしまう…と憤りを感じることは多々ありました。それでも、まだ自分たちの存在自身が脅かされることを、身近には感じていませんでした。しかし地球という天体に暮らす生き物は、この天体の成り立ちに大きくよって生きていました。地面に穴をあけ巣を作るアリたちに、突然人間の足が振り下ろされ、アリから見れば大いなる存在の人間の前になすすべもなく逃げまどう。それらを想起させるように、あっという間に大地はうねり、大波が現れました。そして人間が創りあげたエネルギー源は、自然界のエネルギーに飲み込まれ、制御がきかなくなってしまいました。地球、そしてそれを受け容れる秩序ある宇宙のなかにあって、人間もまたなすすべもないように思えてしまう。そんな日々もありました。
そんな中、4月の幼稚園はというと、健気な子どもたちで一杯です。2,3週間家の中に閉じこもって過ごし、そこからいきなり集団生活!!という新入児。「地震があるからママといたい!」と訴える姿もありました。それでも不思議なことに、それぞれ過ごしたい場所で何かをやれることに気がつき出すと、不安を忘れてそのことにのめり込んでしまう一瞬が出てきます。そのことがお子さんの心と体のバランスに快感なのでしょう。また5歳児くらいになると、もっと順応性が高まって、集中する早さと継続時間が長くなって、こんなご時世であっても人間として普通に生きられる時が豊かにあるのです。春の園庭で、アリもまた生き残れたものたちが、何事もなかったかのように、また巣作りに励むことを繰り返していきます。私達も今出来ることを淡々とやっていけばいいのかと、幼子の姿から教えられます。そういえばいろんな新種の遊びがありました。水路での津波ごっこ、机の下からの緊急避難ごっこ、消防車の放水を模してホースからの水まき、絵本が山のように床に積まれていたことも。。。まるで震災の後の部屋。。。と苦笑いしてしまいました。新入のメンバーのエネルギーには脱帽です。
園長  松本 晴子

いろいろ、いろ遊び


最近は園庭に絵の具遊びのコーナーを用意しています。はじまりは牛乳パックに水を入れて「牛乳です」と遊んでいたA君に絵の具を出してあげたことでした。その日はペットボトルに白ベースの赤、青、緑、黄などを溶かし、味の違う牛乳を作りました。数日たった今はペットボトルの水に筆で絵の具を落とし、水中での色の落ち方や混ざり方を試していたり、手にベタベタと付けては洗うことを繰り返す、手形をとる、紙をそめたり色を重ねていく等、様々な遊び方をしています。5色の絵の具は混ざり合って変化を続けるので、どんな色ができるのか、子ども達は試していくしかありません。友達の作った色に驚いたり、自分が驚かされたり。私が今日初めて出会った色はくすんだオレンジと鮮やかな紫、淡く柔らかい黄緑。絵の具と水と偶然の調和がとても素敵な色合いとなりました。
紙を使った遊びを一通り終えるとペットボトルの実験に移る子もいます。ずーっと同じ作業を繰り返す子もいます。そのどん欲な遊び方と集中力には本当に驚かされます。絵の具の多様な性質は子ども達の興味をたっぷりとくすぐってくれるのですね。
4月は緊張や不安も強い時期。まして震災後の子ども達は揺れに敏感になり「地震だ!津波だ!」という遊びをしていることもしばしばです。気持が落ち着かない時だからこそ、何かに没頭できる瞬間を大切にしたいものです。春の気持良い空気と絵の具遊びで、心も清らかになるのか、遊び終えた子ども達はいい表情でした。
小林悠子

つくしっこクラブ
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